曼珠沙華

Der Vogel kämpft sich aus dem Ei.

また降る花を見た



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私は今、夏の中にいる。



今までは本当に長い春だった。
私が80歳までこの人生を送ると仮定すると、
そのうちの三分の一もの時を、
豊かで暖かな春として過ごした計算になる。


春、私が一番好きだった季節。

思いに満ちた花が咲いて、
愛に似た温もりが身を包む春。
懐かしさを含んだ新しい空気、
包みこんでくれる腕のような風。
萌芽の薫り、若い囀り。


大好きな春。
私の春。
長いこと幸せだったと思う。
常にその理由はあったのだろう。
幸福の根源であり、流し込む先でもあり、
春を春たらしめてくれていた絶対のもの。
そこへ手が届かなくなった今、私は、
自分自身の季節の移り変わりを深く感じている。













夏は春の次に好き。
秋はそれと同じくらい好き。
冬は嫌い。


ここはすごく暑い。
強すぎる日差しに、身の外も、中も、焼けつくよう。
心までもが、溶け出しそうに熱を吸う。


この夏は、きっと長くは続かない。
焦がされて、灰になってしまう前に、
感傷を求めて海を渡り、
そこから長い秋が始まる。
そして冬の訪れを怖れる間もなく、
美しい秋の只中ですべてを終えることだろう。











追記
不思議なことだけど、
異国の太陽の光に、
私はあなたの肌の感触を覚えたのです。


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