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「money」の単語は、もう聞きたくない

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先日、ベトナム滞在のビザに関する手続きのため、
カンボジア国境へ日帰りで行って帰ってくるという、
8か月の乳呑児を抱える身としてはなかなか過酷なシチュエーションであるといえる
ビザランを、家族3人で決行してきました。



プノンペンまでの長距離バスを利用したことはありますが、
ベトナム国境のモクバイまでというバスに乗るのは今回が初めて。
路線バスとはいえ、曲がりなりにも国境まで三時間弱は走るわけですが、
その運賃は、驚きの片道40,000VND(約200円)。

見た目は割と立派なバスなのに、
乗った途端、壊れたままの状態の椅子が目に入ってきた時は
壮絶な旅路の始まりを予期して絶望もしましたが、
実際はちゃんと冷房も完備で、乗り心地もさほど悪くはなく、
「吟士が舐めようとした窓枠を試しに拭いてみたらドロッドロに汚れていた」
という、子連れには厳しい衛生面を除いては、
それなりに快適なバスだったといえる気がします。



バスを降ろされた場所が、出国ゲートの建物から離れた地点だったため、
バスが停車し、ドアが開いたその瞬間から、
「バイク!モーターバイク!パスポート!バイク!ビザ!」と
口々に連呼するバイクタクシーの兄ちゃんたちが数人群がってきました。

それらを適当に払いのけ、ひとまず最初の5分ほどは歩いてみましたが、
折しもこの日は灼熱の晴天にて、
体感温度は40度近いのではないかというレベルの熱々地獄。
降車場所からずっと、飼い主によりそって歩く忠犬のごとく
(もしくは生ごみに群がるハエのごとく)
我々をしっかりマークし続けてきていたバイクの兄ちゃん達に聞くと、
「1USD」とのことなので、ここは赤子の体力も考慮し、利用してみることに。

バイクで走ること、ものの1分弱。
出国ゲートの建物まで運んで1USDかと思いきや、
到着後、なぜかゲートまで付いてくるバイク兄ちゃん達。
(彼らは2人組でしたが、便宜上、兄貴分ぽい「バイク兄」と、
 下っ端らしい「バイク弟」という表記にて進めたいと思います)

彼らは、なにやら、出国審査で提出するパスポートの中に賄賂を挟むよう、
我々にさかんに進言してきている様子です。
言われてふと見ると、2か所オープンになっている出国審査の係員の前には、
これでもかというぐらいうず高く積まれた、
出国審査待ちパスポートの山が。

なるほど、これは確かに、今までにも経験がありますが、
モクバイの出国審査に「順番待ち」という概念ははなから存在せず、とりあえず、
金さえ払っておけばサッサと通過させてもらえるシステムになっているのです。

この、モクバイの汚れきった暗黙ルールも、
近頃はだいぶ改善されたと話では聞いていたのですが、
この日のこの時間帯は、たまたま団体客とあたって混みあっていたため、
まだ現役で有効活用されている悲しき場面に遭遇してしまったのかもしれません。


なんにせよ、出国ゲートの建物はトタン屋根の巨大倉庫のような体を成しており、
当然冷房も無く、ジッと立っているだけでも滴る汗を抑えることができない状況。
ここでひたすら待つのも至難の業です。

背に腹は代えられぬ、と、3人分のパスポートに100,000VND(約500円)を挟み込むと、

バイク弟 「違う!1人100,000VND!3人で300,000VND!」


何故かバイク弟が指示してきます。
なんでお前が口出ししてくるんだよ。
などと思いつつ、300,000VNDの出費を許すべきか悩んで財布をしまいかけると、

バイク弟 「じゃあ200,000VND!3人で200,000VND!」


値下がりしました。

ていうかなんでお前が勝手に決めるんだよ。
などと思いつつ、まあ200,000VNDで赤子を灼熱から救い出せるなら安いものかと、
200,000VND札一枚を準備したところ、
その紙幣を、何故かバイク兄に100,000VND×2枚と両替してもらった上で
バイク弟がわざわざ出国審査まで提出しにいってくれました。

なるほど。
100,000VNDは提出用、100,000VNDは自分のポケット用ですね。
それにしてもわかりやすい。
ていうか目の前で両替されたら、だれだってわかる。


そして金に物を言わせた効果はてき面で、
私たちより先に待っている人がわんさかいる中、
ものの数分で出国審査終了。

結果的に、進言をしてきてくれたバイク兄弟へは感謝しつつゲートを通過し、
あれ、でもそういえば、あいつらに1USD払ってなくないか……?
と考えていると、建物を出たところで、

バイク弟 「お疲れ!じゃ、カンボジア側行こっか!」


また、バイクにまたがって待っていてくれました。

出国審査関係なく国境を行き来できる彼らは一体何者なのでしょうか。


私は、終始、バイク弟の方に乗っていましたが、
カンボジア側国境バベットのあたりで、
「俺の兄ちゃんが国のどうのこうの」とか言っていたので、
家族が権力者だから俺は国境行き来できるんだぜ、
とか釈明したかったのかもしれません。

ちなみに、NORIさん担当だったバイク兄の方は、
「俺の父ちゃんが国のどうのこうの」とか言っていたらしいので、
もうこうなってくると何もかも信用がならない、というか単純に
国境自体がどうしようもなく適当なだけである気もしてきました。





カンボジア側の入国へはバイクで1~2分。
今回の旅は、ベトナムへ入国する際に発行してもらうビザ、が目的でしたが、
つまりは一度出国の必要があり、
ひいてはカンボジア入国の際のビザも必要になるということです。

事前にネットで申請できるEビザが一般的ですが、今回は事前準備の時間がなく、
その場での取得でいこうとしていたところ、ビザブースへ到着した途端、
ビザの申請用紙を手に群がってくる数人のおじさん達。
なにやら、書くのを手伝ってくれるようで、
頼んでもいないのに率先してやってくれています。
手数料どれぐらい取るつもりなんだろうなぁ……と考えつつおとなしく待機。

おじさん「写真ね!必要だよ!」

私達  「え、写真無いよ」

おじさん「うん!じゃあいいよ!」


といった、適当すぎるやり取りもありつつ、
最終的に求められた料金は、1人40USD x 3人分 =120USD。
ダイレクトに申請すれば1人30USDなので、彼の合計手数料は30USD。
手助けの所要時間はものの15分ほどでしたので、実に実入りの良い商売といえます。

そして200USD渡し、ビザとともに帰ってきたおつりは、なぜか70USD。
問い詰めてみると、
「写真無かったでしょ!だからコーヒー代取られたの!」とのこと。
ベトナムでは、「コーヒー代=賄賂」と隠語があることは知っていましたが、
その時は一瞬、それとこれが結びつかず、何度も
「コーヒー代って言ってる気がするけど聞き間違いか?」と頭をひねっていました。


この時点でかなりイライラしたものの、赤子の平穏のため文句は言わず、
カンボジア入国へ。バイク兄弟はなぜかどこまでもついてきます。

バイク兄 「パスポート出すとき、お金挟みなよ!100,000VND!」

え?なんで?なんのために?カンボジア入国もそんな混んでんの?

サラッと無視して入国審査へ進むと、待ち人ゼロのガラガラ状態。
もちろんお金が要るはずもなく、無事に入国後、
当然のように待機しているバイク兄弟と共に、
折り返して、今度は早速カンボジア出国。

もうこのあたりは、同じ敷地内で境もあいまいになっているため、
出国審査のブースに、ビザを手伝ってくれたおじさんがまた居たりして、
もうなにがなんだかわからない。

しかも、出国のパスポートチェックを待っている我々に、彼は再度近づいてきます。

おじさん「この人(出国審査官)にお金を払った方がいい。
      一人100,000VND払うべきだ」

私達  「は?なんのお金?なんのための??」

おじさん「コーヒー代だよ。コーヒー飲みたいんだよ」


なに言ってんの?????

無論、払う気は毛頭ないのでここも無視。
賄賂を払わない我々に、なぜか出国審査官もキレ気味でしたが、問題なく通過。




そしてベトナム入国に際して、一番肝心のベトナム側ビザ申請。
バイク兄弟は、新たなおじさん集団をまた引き連れて、
既にばっちり、こちらの申請用紙も準備してきています。
抜かりなく、一貫してフォロー(という名の搾取)してくれる体制のようです。


今回、ベトナムビザ取得が必要なのは、私と吟士の2人分。
ビザ手数料は一人95USDと聞いていましたが、おじさん集団に助けてもらった結果、
彼らによる請求額は、一人120USD。
ここまでのビザ申請等々はすべて屋外で行われており、
暑さも手伝って段々感覚も麻痺気味になってきた我々は、
赤子の機嫌の限界も近いことだし、煩わしさ回避のためにその額を払うことに。

私達   「はい、2人分240USD」

おじさん達「いや、足りない。1人140USDだから280USD」

私達   「は???さっき120USDって言ったよね????」

おじさん達「違う」

私達   「本来95USDでしょ!!120USDでも高いからね!!!」

おじさん達「ああ、そう、じゃあいいや」


あっさり120USDに戻りました。


そんなやりとりに、イライラとはまた別の呆れを隠しきれない我々へ、
更に、またしてもカンボジアのビザおじさんがそっと近づいてきます。

おじさん「私にお金を払った方がいい」

私達  「(しつこすぎる……!!)」

おじさん「私はあなた達の申請を助けたんだから、よこしなさい」

私達  「何を?もうさっきお金いっぱい払ったよ」

おじさん「コーヒー代だよ!さっきのはベトナムのやつでしょ!
     おじさんはカンボジアの人!カンボジアのコーヒー代払ってよ!」

私達  「(唖然)」

おじさん「10USDくれ。200,000VNDでもいい」


私もNORIさんも、もうこうなってくると、
口論も、あしらうのも、何もかも煩わしくなってくるため、
なんとか多少まけてもらって、150,000VNDのコーヒー代にて落着。
ずいぶん高級なコーヒーが飲めそうです。
スターバックスにでも通うつもりでしょうか。




そうしてようやくベトナム入国のビザ待ち。

これが、なかなかどうして待たされる。
風通しが悪い建物内で、赤子を扇ぎ続けながら、ただひたすら待つ。
時々、気を使ったバイク弟が何回も椅子をすすめてきたり、
代わりに吟士を扇ごうと近づいてくるも、
下手に親切にしてもらった結果、また何か見返りを求められるのではという
完全なる疑心暗鬼状態に陥っている我々は、
そんな手助けをことごとく拒み続けて20分。

何故か、ビザ発行所と反対側の方向から、
「OK!OK!」と呼んでくるバイク兄の声が。
また不審な気持ちになりながら近づいてみると、
ネームタグを付けた、ビザ発行所の正式な職員であろう男が、
私のビザ申請書面を前に首を横に振っています。

職員 「このレターによると、1年ビザだね。1年ビザは、ダメだ。6か月だ」

私達 「(勘弁してくれ……)えっと……どういう……」

職員 「さっきのお金は、6か月用。1年用だと、お金がもっと要る」

私達 「(やっぱりきたーーー!!!)」

職員 「1人、140USD。だから差額20USD。払って。早く」


もはや、ここまで来ると、根拠不明の搾取され続けに、
さすがの堪忍袋も限界が近づいてきたため、わずかでも心の平静を取り戻すため、
念のため、今回いろいろと調査や手配をしてくれた、
NORIさんの会社の総務の方に電話をして確認。

その回答は、
「法律では95USDで決まっているけど、国境でそれが守られていない可能性がある」


うん!そうだよね!
現に、国境の職員が堂々と意味不明のふっかけしてきてるからね!
法律なんてあってないようなもんだということだね!!


しかしこのビザ待ちの途中から、いよいよ赤子の機嫌も危うくなってきたので、
半ばこの国への呆れ返りも込めながら、もはや心を無にして差額を支払い。

更に折り返して20分ほど待ち、
抱っこひもで抱っこされたままの吟士にミルクを飲ませたりしているうちに、
とうとうビザゲット。


長かった。
異様に長かったように感じた。
実際の所要時間は、モクバイ到着してから1時間30分ぐらいしか経っていないけど、
どういうわけだか、精神的な疲労が激しすぎて、
体感の経過時間が丸一日分ぐらいだったように思えてしまう始末。

でもこれで目的達成だ。
ビザの内容を確認してくれる国境職員も、
ふっかけてきた先ほどは鬼に見えたものですが、
無事に入手できた今となっては、
ありがたさのあまり、仏様のように感じられるものです。


職員 「じゃあ、これね、種別と、期限、間違いないね」

私達 「はい!!」

職員 「さて、と」

私達 「(やっと終わった……)」

職員 「金くれ」

私達 「……は?」

職員 「金くれよ」

私達 「………………」

職員 「コーヒー代くれ」



私  「んだようるせーんだよ金金っていい加減にしろよ
    こちとらイライラしてんだふざけんな○○が地獄に落ちr




ここへきていよいよ爆発です。

というか、ビザをもらう段階で既に嫌な予感がしていた私は、
「もしもここでお金とか言い出したら、キレよう」と、
もはや万全の準備をしていたため、
ここぞとばかりに元気満々でまくしたてました。
しかし、実際は、途中で理性が働いて冷静になり
「イライラしてんだ」あたりでその後の暴言は控えたため、
すぐ真下にいた我が子には、
さほど汚い言葉を耳にはさせていませんからご安心ください。


何が何でも払いたくなかった我々は
「お金が無いんだ」「私たちは貧乏なんだ」と散々訴えた挙句、
NORIの財布に入っていた小銭(たぶん全部で60,000VNDぐらい)をすべて並べ立て、
すっからかんになった財布の中身まで見せて貧困アピールをした結果、
「マジかよこいつら帰り道どうすんだよ」ぐらいの
若干の引きを滲ませた表情にて職員が受け取り、なんとか解決となったのでした。


その後、職員がバイク兄に、おそらく
「こいつらヤベぇよ、ガチでスカンピン」みたいな
悪口を言ってるのが聞こえましたが、もう何とでも言ってもらって結構です。

入国審査で待っている間、ふと、一番最後に残っている、
2時間アテンドしてくれ続けだったバイク兄弟への支払いのことが頭をよぎりました。
一体いくらふんだくられるかはわかりませんが、
一度成功した文無し作戦が功を奏しそうなので、
今度は私の財布で空っぽを演出すべく、
手持ちのお金の小銭以外を全部カバンの中に隠すという、
およそ、慇懃な日本人がするには憚られそうなせせこましい工作に打って出ました。

書類一枚書くだけで30~40USD抜き取るアコギな商売をする奴らですから、
最初から最後までバイクで全部ベッタリだった分、
相当な額をいってくるに違いありません。
ですが、「手持ちは10USDしかない」のです。
10USDしかないと言い張って、
空っぽの財布を見せ、無理やり納得させるしかないのです。
もはや喧嘩腰になっても構わない覚悟で、
バイク兄弟へ帰りのバス乗り場まで送ってもらいました。


バイク弟 「はい、到着だよ、お疲れさま」

私    「うん(仏頂面)」

バイク弟 「バイク代ください」

私    「いくら??(喧嘩腰)」

バイク弟 「一人5USD」


えっ。
意外にリーズナブル。


まあ、一番最初は「1USD!」とか叫んでましたから、
ぼったくっていないとは言い切れませんが、
それでも、これだけ延々と付き合ってくれて、
手続きの手ほどきをしてくれたことを思うと、
少なくとも、その他の登場人物おっさん連中に比べれば、
かなりの良心的価格設定であるといえるでしょう。

それは彼らの地位の問題なのか、人間性の問題なのか、はたまた、
国境職員の「ガチでスカンピン」発言を受けて、
「こいつらは、せびっても何も出てこない奴らだ」と
既にあきらめを抱いた上での結果であるのかは、
定かでありませんが、何れにせよ、
最後の最後で不快な思いをせずに済んだので助かりました。




そんなこんなで帰りのバスに乗り込み、
帰りは帰りで、終点まで乗るはずだったのに、途中で
「終点まで乗るヤツはここでバスを降りろ!!」という鬼の仕打ちを受け、
ローカル路線バスに無理やり乗り換えさせるというイベントもありましたが、
なんとか無事に帰ってこられたので、そんなことは些末な問題にすぎません。



ちなみに、朝9:00に家を出て、18:00頃の帰宅という長旅でしたが、
吟士くんは割合終始ご機嫌でした。
ホーチミン到着後、両親が悠長に丸亀うどんで
夕食をとっている最中に抗議の声を上げていた程度で、
それ以外はあまり泣くこともなく、おだやかな旅路とすることができました。



今回は8か月児連れだったこともあり、
「とにかく時間をなるべくかけずにビザ取得」というのが絶対的な目標だったため、
それの達成のため、やり方次第では決して払う必要のない料金を
散々支払わされた形となったわけですが、
結果的には、彼らのおかげでスムーズな進行ができたので、
それなりに価値にある対価だったと考えています。




地獄の沙汰も金次第。


この日ほど、この諺が身に染みた一日はありません。


しかしおかげさまで、不法滞在親子とならずに済みましたので、
閻魔様たちが美味しい高級コーヒーを飲めていることを願いながら、
引き続き、エキサイティングなベトナム生活を満喫していきたいと思っております。



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